レイ・ダリオ氏の【30分で判る 経済の仕組み】をわかりやすく解説します その11
バブル経済が崩壊した際に行う政策のうち「お金を印刷する」という方法がベターであるという気配が出てきたところからの説明です。
これはリスクを伴います。政府は4つの方法のバランスを保ち債務を減少させることが大切です。デフレ要素とインフレ要素のバランスを保つことが経済の安定につながります。このバランスが達成できればレバレッジの減少はよい結果をもたらします。レバレッジの減少は悪い結果、またはよい結果をもたらすことができます。
これまでの説明で「お金を印刷することが正解」という印象ですが、説明の通りインフレ要素とデフレ要素のバランスを取ることが大切です。
お金を印刷して国債を購入することは国の借金を増やすことになります。
その借金は未来の税収からの返済となるので、あまりに大きな額になると国民の負担が増加して国家運営に支障をきたします。
これまでの説明では「支出の抑制」「債務の再編」「富裕層への課税」が全てデフレを招くような表現となっておりますが、これらもバランスを取って実行することで、強度が変わり、場合によってはインフレに向かう可能性があることを頭の片隅に置いておきましょう。(適切な富裕層への課税は政府の税収増に繋がり、インフレを促進させる可能性がある等)
レバレッジの減少がよいとはどんな場合でしょう。これは難しい事態ですが、それに上手に対応できるならよい結果が可能なのです。これは債務が引き起こすアンバランスで過激なレバレッジよりよく、その場合所得と比べて債務が減少し、実質経済が向上し、インフレ問題が解消されます。
ここは解釈が難しい部分ですが、ここでの「レバレッジの減少」はバブル経済の崩壊を指していると考えています。
「それが良い場合もある」については、「レバレッジを掛ける(将来の負担を増やしつつ、今すぐ手持ち金額を増やす)」ことで投資が行えたり、手持ちの金額より大きな商品(家や車など)を購入することで人生の豊かさを感じ取れるようになります。
ただ一方で人の性(目の前で起きた出来事が継続するという錯覚)に打ち勝たなければ、バブル経済の始まりと崩壊を繰り返すことになります。
そのためバブルの崩壊は受容するものと捉えて「適切な債務返済プランを実行することが大事」という内容だと解釈しています。
これはバランスが取れた場合です。このバランスを可能にするには上手に支出を抑え、債務を縮小し、富を再分配し、お金を印刷することで経済と社会安定を維持できるのです。お金を印刷すればインフレが起きるのではないかとよく聞かれます。それでクレジットの暴落を相殺できるのならインフレにはなりません。
お金で支払われようがクレジットで支払われようが支出が増加することに違いはありません。中央銀行はお金を印刷して、ふえたお金を使って減少しているクレジットを補えます。
ということで、「実施することでデフレになりえる」と説明された3つの方法(「支出の抑制」「債務の再編」「富裕層への課税」)とお金の印刷をバランスよく実施することで経済と社会を安定維持することができる。というお話でした。
お金を大量に発行することでインフレが起きるリスクは確かにありますが、クレジットが減少している分をお金で穴埋めすることで、人の支出を維持することができるのです。
景気を回復させるためには中央銀行は所得を増加させると同時に、所得の成長率が蓄積した債務の利子額よりも早くふえるようにする必要があります。これはどんな意味でしょう。基本的には所得が債務より速いスピードでふえることが必要なのです。
レバレッジが減少している国があると仮定しましょう。この債務対所得の比率が100%としましょう。するとその国の1年の総所得は既存の債務と同額であることになります。この債務に利子がつくとします。
利子が2%と仮定します。この利子率のため債務が2%の率でふえており、その一方で所得が1%の率で成長しているなら債務の返済は不可能です。
別の例で説明すると100万円を融資されたとして毎月2万円の利子を支払う必要があるが、毎月1万円しか支払わなかった場合、いくら時間をかけても100万円の借金は減ることが無いという話です。
それをここでは「所得が債務より速いスピードでふえることが必要」とまとめられています。
所得成長率を利子率よりも高くするためには十分なお金を印刷する必要があります。でもお金を印刷するのは簡単ですから悪用されやすく、国民も印刷を希望することが多いです。大切なことは1920年代にドイツで起こったように、お金を大量に印刷してハイパーインフレを引き起こさないことです。
特に解説は不要でしょう。
映像を楽しんでください。
政府がバランスを維持できれば問題は悪化しません。成長率は低くても債務は減少します。レバレッジが減少していてもこれは可能です。所得がふえると借り手の信用が向上します。そうなると貸し手はお金を貸すようになり債務負担は減少しだします。お金を借りることが可能になれば支出もふえ、経済は成長へと向かいます。
ここでも再度バランスの重要性が説かれます。
バブルの崩壊後もバランスよく経済対策を行うことで、経済成長へ転化することができると説かれています。
また動画中の成長率は「取引額の総量」を表しており、それらが低くても構わないと主張されています。
ただ、成長率がマイナスの場合どうなるかは触れられておらず、現状の日本国内の少子高齢化を加味すると経済を成長に向かわせるのは(人口が減っている以上)難しいと個人的には考えています。
とはいえ世界規模で考えると人口は増加し続けており、経済成長率も2%程度で増加し続けていることを加味すると、レイ・ダリオ氏の主張にも頷けます。
なんと次回が解説の最終回!