気合を入れて続けます!
これは不景気と似ているようですが違います。利子を下げても景気回復に結びつかないのです。不景気なら利子を下げれば借りる金額がふえます。でもレバレッジが消滅していますから利子を下げようとしても既に利子は低くなっており、ときには0%になってしまいます。すると景気回復は不可能です。
アメリカの利子はレバレッジが消滅した1930年代に0%となり、また2008年にもそうなりました。不景気とレバレッジ消滅時の違いは、後者では借り手の負担があまりに大きくなっていることです。これは利子を引き下げても回復が不可能です。
借り手は全額を返済することができない現実に直面します。借り手は返済能力を失い担保の価値はなくなります。負債の重さに耐えきれず借りる気力もありません。貸し手は貸すことをやめ、借り手は借りることをあきらめます。経済の価値が消滅した状態となっているのです。
支出を減らすことにより始まったこの悪循環は、不景気とは成り立ちが異なります。
好景気になると物価が上昇していきますが、過度な物価高は生活の混乱を招きます。
これを防ぐために中央銀行は金利を上げることで、借り手の返済額を増やそうとします。
借り手は返済額が増えると、余計な支出を減らす(余計なものを買わないように)なります。
すると商品の買い手が少なくなり物価は下がるので、中央銀行は物価の上昇局面では金利を上げて物価高を防ごうとします。
逆に不景気の局面では、中央銀行は金利を下げて融資をしやすくすることで、借り手の負担を減らして、多く消費することを促します。
これが好景気と不景気に対する金利の基本的な考え方です。
これは蛇足ですが、図のように金利がマイナスに突入することが実際起こっています。いわゆる「マイナス金利」です。
動画の解説から脱線してしまうので、簡単に書きますが「銀行が誰かにお金を貸し出さないと、銀行が中央銀行に手数料を取られる」という内容です。
さて、「金利を下げても景気回復がしない」という点について、ここでは「借り手の負担が大きくなりすぎている」と解説されており、やや抽象的な言い方をしているので、もう少し深堀してみます。
なぜ「バブル崩壊時は金利を下げても効果が薄い」のでしょうか。
それはバブル崩壊中の局面では、手持ちの資産が減っている状態で、多くの人が(金利が低いとしても)多くの融資を受ける勇気を持つことができないからです。
ここでバブル経済に向かう際に出てきたワード「人は最近の動向にのみ注意を払う」という部分に注目しましょう。
これはバブル景気に向かう時に出てきた一文ですが、今回のケースでも同じことが言えます。
つまり「この資産の減少はいつまでも続くだろう」と考えるため、新たな借金を作ることを控えようとするため、金利を下げても効果が薄いのです。
これは個人も同様です。ではレバレッジが消滅したときどうすればよいのでしょうか。耐えきれないほど大きい債務負担を縮小しなければなりません。これには4つの方法があります。
第1に、人、ビジネス、政府が支出を縮小する。第2に、債務は不履行となりまた再編される。第3に、資産は富裕層からそれ以外に再分配される。そして第4に、中央銀行が新しい紙幣を印刷する。この4つはレバレッジが消滅した際に実際に起こっています。
バブル崩壊後は金利を下げることだけでは景気が回復しないことがわかりました。
では、どうしたら良いでしょうか。
ということで4つの方法が示されました。
ここで勘違いしやすいのは「この4つの方法も適切に運用しなければ、景気は回復せずむしろ悪化させる」という結果になることです。
これから順番に4つの方法について解説が行われますが、そのうちの殆どが結果的に景気を悪化させることになるのです。
普通、支出がまず縮小されます。人、ビジネス、政府が財布のひもを締め、支出を縮小し債務を返済しようとします。これは緊縮策と呼ばれます。借り手が借りることをやめ、古い債務の返済を始めると債務負担率が減ると考えがちですが、その逆が起こります。
なぜなら支出が減り、支出はほかの人には収入源ですから所得が縮小します。所得は債務返済より速いスピードで縮小します。すると債務負担率が悪化するのです。以前にも言ったように支出が減るとデフレを起こします。ビジネスはコストを減らそうとしますから雇用が減り、失業がふえます。そうするとさらに債務を減らす必要が出てきます。
一つ目の方法「人、ビジネス、政府が支出を縮小する」という方法を取った場合に何か起きるか説明されています。
ここでわかりにくいのが「個人か」「全体か」という視点です。
借りたお金の返済に追われている場合、まずは支出を減らそうとします。
個人の動きとしては正しい(債務負担率は減少する)のですが、経済全体で見ると他の誰かの所得が縮小することになり返済に充てる金額が減ることで、さらに債務負担率が上がるのです。
つまり「人、ビジネス、政府が支出を縮小する」という方法を取ることで、経済全体としては「債務負担率が悪化する」のです。
借り手の多くは借金を返済できません。借り手の債務は貸し手の資産ですよ! 借り手が銀行に返済できないと人々は銀行に預けたお金が心配になり、銀行に殺到して引き出そうとし、銀行の経営は難しくなり、人々やビジネスは債務の返済が不可能となり、このため経済恐慌となります。恐慌は人々が資産と考えていたものが消滅したと気づいたときに起こります。
二つ目の方法「債務は不履行となりまた再編される」とどうなるでしょうか。
これは「債務を帳消し、または契約時に決めた金利より借り手の負担を低くする」などといった方法です。
これを行うと、確かに借り手側の債務負担率は下がるのですが、貸し手側からすると苦渋の選択となります。
貸し手である銀行が苦しい状態になると、人々は銀行に預けたお金が心配になり、引き出そうとします。するとさらに銀行の経営が苦しくなるのです。
飲み屋に戻って考えましょう。ビールを飲んでツケにしました。飲み屋に後で返済すると約束したのです。これは飲み屋にとっての資産です。でも約束が破棄され返済ができなくなるとツケが不履行となります。
すると飲み屋の資産の価値がなくなってしまいます。消えてしまうのです。貸し手は資産の消滅を避けるため債務の再編に同意します。でもそうすると返済額を縮小したり、返済期間を延長したり、最初に決めた利子を引き下げたりします。
債務を縮小するために契約が破棄されますが、貸し手は全く返済されないよりは幾らかでも回収したいのです。すると債務が消滅しても債務が再編されると所得と資産価値は急速に減り、債務負担率がさらに悪化します。支出を減らすのも苦しいですが債務を減らすのも大変なのです。
つまり、(一部は要約しますが)「債務を再編することで、貸し手側が本来得られるはずの利益が得られないために貸し手側の所得が減り経済全体では債務負担率が悪化する」という内容の説明です。
本質的には一つ目の手法「人、ビジネス、政府が支出を縮小する」と同じ経路を辿ることになります。
ただ、この一節では「債務の不履行や再編に効果がない」という結論に着地していますが、実際にはバランスを見て調整することで、債務負担率を改善することも可能のようです。
今日はここまで!
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